Top > これ恋番外編 > 寝過ぎは早死にの原因となるか 前編

睡眠時間と寿命の関係

1980年代にアメリカで100万人以上を対象として行われた睡眠時間と寿命の関係の調査では予想外の結果が出ました。1日の睡眠時間が6.5〜7.5時間の人が最も長生きで、それ以上あるいはそれ以下の人は短命になる傾向にあったのです。

日本でも名古屋大学で同様の調査が行われていて同じような結果が出ています。このことから睡眠時間が長ければ早死にする傾向があるというのはどうも事実のようです。

問題は調査で得られた事実をどのように解釈するかであり、解釈のしようによってはトンデモ(学問上の常識から逸脱した仮説)にさえなってしまうのです。恐るべきことに多くの人がトンデモを信じ込んでしまっています。

私は騙されている人を放っておけない性格なので読者の皆さんにはぜひとも睡眠時間と寿命に関する誤解を解いていただきたいと思います。

本当に寝過ぎが早死にの原因か

この調査結果がマスコミに取り沙汰された時のことです。私は睡眠時間が異様に長い日があり、時には15時間を超えることさえあるので友人に「そんなに寝てたら早死にするぞ」と言われました。それに対して私は「そんなことを言うと寝過ぎて死ぬ前に笑い死にそうだ」と反論しました。

どうも世間は睡眠時間が長い人は早死にの傾向があるという事実に対して「寝過ぎが早死にの直接的な原因である」とこじつけたようです。はっきり言ってこの解釈はトンデモです。なぜトンデモか、それは代謝量と寿命の関係を知ることでわかります。

代謝量との矛盾

実は寿命を決定している要素が何なのかというのは完全にはわかっていません。しかしテロメアと活性酸素は寿命に深く関係していると考えられています。前者は染色体の末端部分を保護する領域で細胞の分裂回数を規定するもの、後者は生体の構成成分を傷つける毒です。

テロメアに関しては老化との関係性が指摘されていますが直接寿命を決定している確証がないためここでは述べないことにします。

それに対して活性酸素は直接的に寿命を縮める要因であると言える証拠があり、マウスを用いた実験では食事量や運動量を増やすほど寿命が短くなることが明らかになっています。このことは消費する酸素やエネルギーの量、すなわち代謝量が寿命を決定していることを示唆しています。

摂取した糖やタンパク質、脂質などの栄養素は代謝の過程で水素原子を引き抜かれます。水素原子はNAD+やFAD+等の補酵素に渡されてNADHやFADH2になり、それらはミトコンドリアの電子伝達系で酸化されてエネルギーであるATPを生み出します。

このとき酸素分子に4個の電子が渡されて2分子の水が生成します。水が生成した場合は何の問題もないですが、もし酸素分子に電子が1個しか渡されなければ有害な活性酸素の一種であるスーパーオキシドアニオンラジカルO2-が生成します。(ラジカルの性質は1-12. 有機電子論が詳しい)

活性酸素は反応性が高く生体構成成分を攻撃して傷つけます。特にDNAが傷つけれた場合が深刻で、塩基配列が変わってしまうとそれをもとに作られるタンパク質のアミノ酸配列にも狂いが生じ、やがて生命維持に支障をきたします。

酸素呼吸を行う生物にとって活性酸素の発生は避けられず、そのため我々の体は活性酸素を水にして無害化するスーパーオキシドディスムターゼやカタラーゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素を持っています。傷ついたDNAもある程度は修復が可能です。

しかし除去する前にDNAが傷つけられてしまうこともありますしDNAの修復機構も完全ではありません。このことからやはり吸い込んだ酸素がある確率で活性酸素となってDNAを不可逆的に傷つけていると考えるべきです。その傷が生命維持が困難な状態にまで達したときが寿命になります。

つまり体重に対して吸い込んだ酸素の量が多ければ多いほど、食事量が多ければ多いほど、使うエネルギーが多ければ多いほど寿命が短くなるのです。2008年11月、ミトコンドリアにおける代謝が寿命を決定するメカニズムが解明されてNature誌に掲載されました。

さて、睡眠中の代謝量は起きている間の70%程度しかありません。もし睡眠時間以外の条件が全く同じだと仮定すると睡眠時間が長いほうが寿命が長くなるはずなのです。これで寝過ぎが早死にの直接の原因であるという仮説がおかしいことがわかったでしょう。

問題はこの矛盾をどう説明するかです。考えられることはただ一つ、睡眠時間以外の条件も大きく異なっていてそれが長い睡眠と早死にの共通の原因になっているのではないでしょうか。次はその犯人探しをしていきます。

原因は生活習慣やストレス

そもそも何のために睡眠が必要なのでしょうか。活性酸素等で傷ついた組織の修復は寝ている間に行われるため修復に睡眠は不可欠です。もし傷が大きければそれだけ長い睡眠が必要になります。

そう、必要とされる睡眠時間は状況によって大きく変わるのです。例えば1日中テレビを見たり本を読んで過ごした日は6時間の睡眠でいいかもしれませんが殴り合いのケンカで死にそうになった日は15時間でも足りないかもしれません。

もう答えは見えてきたでしょう。起きている間の活動で細胞が傷つき、寝ている間にそれを修復します。しかし前述したように完全には修復できないため徐々に傷が蓄積し、それが致命的な状態にまで達したときお迎えが来るわけです。つまり起きている間にできる傷が大きいほど睡眠時間は長くなって寿命は縮むのです。

では傷をつける原因は何か。それは生活習慣に問題があったり過大なストレスにさらされていることが考えられます。睡眠時間が長いと感じる人は生活習慣に問題がないか、ストレスをためていないかよく考えてみてください。それらを改善することで睡眠時間は縮むかもしれません。

スポーツをやっている人も多くの酸素を消費するため睡眠時間が長い傾向にあります。

私の場合、睡眠時間が長い日は必ずその原因があります。実験中に危険な目に遭ったり怒られた日は若干の延びが確認できました。15時間も寝た日は両親が激しい夫婦喧嘩をして大変だったときです。

擬似相関という罠

睡眠時間と寿命の調査結果からは一見寝過ぎが早死にの原因になっているかのように読み取れますが、実際は両者に共通の原因が隠れていて寝過ぎも早死にも結果に過ぎないのです。このように直接的な因果関係がないにも関わらず見かけ上因果関係があるように見えてしまう状態を擬似相関といいます。

間違ってもトンデモを真に受けて長い睡眠が必要なのに取らないということはやめてください。その目的が「寿命を延ばすこと」なら尚更です。必要な睡眠時間を取らなければ修復が不完全になるため余計に寿命を縮めてしまいます。

「寝過ぎが早死にの直接的な原因である」という誤解知識を広めたのが言いだしっぺの科学者なのかマスコミなのか知りませんが、彼らには誤解知識が広まったときにどのような被害が出るかを考えた上で責任をもって発表していただきたいものです。

そもそもまっとうな科学者であればこのような初歩的なことに気づかないはずがないと思います。人を寝させずに長時間労働させようと目論む確信犯ではないかと疑ってしまうのは勘ぐりすぎでしょうか。

実は世の中にはそれ以上に根強い擬似相関の嘘があり、しかも利権と陰謀で塗りたくられているのです。

地球温暖化のCO2犯人説も擬似相関

読者の皆さんの中には「地球温暖化」という言葉を知らない人はいないでしょう。最近では気候変動という言葉に置き換えられつつありますが実質的には同じものです。

世界各地で永久凍土や氷河が後退していることから地球温暖化が起こっていることは紛れもない事実です。しかしその原因が人為的に排出された二酸化炭素であるというのは間違いである可能性が高いと考えられます。

その根拠としては気温上昇に追従する形で二酸化炭素濃度が増加していることが挙げられます。もし二酸化炭素の増加が気温上昇の原因なら逆になるはずです。この現象は気温が上昇することで海水温が上昇し、海水中に溶けていた二酸化炭素が大気中に放出されたと考えると説明がつきます。

つまり地球温暖化の原因が人為的に排出された二酸化炭素であるという仮説も擬似相関だと考えられるのです。さらに驚くべきことに近年、新興国の経済発展によって人為的な二酸化炭素排出量が増大しているにも関わらず平均気温が低下する傾向にあるのです。これを寒冷化の始まりだと主張する科学者もいます。

このような懐疑論を唱える科学者の中で最も説得力のある説明をしているのは東京工業大学大学院の丸山茂徳教授です。前述したように気温上昇の後に二酸化炭素濃度が増加しているという矛盾は丸山教授が指摘しておられます。

さらに丸山教授は近年見られる平均気温の低下を地球寒冷化の始まりであると主張する科学者の一人です。

丸山教授は大陸移動の原動力である地球表層のプレートテクトニクスをマントル全体に拡張した新理論「プルームテクトニクス」を提唱し、学界に衝撃を与えたという輝かしい過去を持っています。つまりどこの馬の骨かわからない科学者や科学者もどきとは一線を画する人間であるという事実は念頭に入れておくべきです。寝過ぎが原因で寿命が縮むなどというホラを吹いたトンデモ科学者とはわけが違います。

当然、権威があるからと言って完全に信用していいというわけではありません。私も最初は何らかの陰謀があるのではないかと疑いましたが、結局非の打ちどころを見つけることはできませんでした。しかし常識的に考えると権威ある科学者が嘘を言って自分の名声を傷つけるようなことをするはずがないでしょう。

地球温暖化の二酸化炭素犯人説を主張するIPCCが排出権取引で荒稼ぎする利権団体であるということも忘れてはなりません。そもそもIPCCはイギリスがサッチャー政権だった時代に原発を推進する目的で設立された団体ですから怪しさ満点です。

丸山教授の地球温暖化懐疑論について興味のある方は教授の著書「科学者の9割は地球温暖化CO2犯人説はウソだと知っている (宝島社新書)」や「地球温暖化論に騙されるな! (講談社)」を読んでみてください。

ちなみに私としては化石燃料の使用量を減らす努力は無駄ではないと考えています。なぜなら世界の石油生産量が2008年7月にピークを打ち、早かれ遅かれ世界は深刻な石油不足に陥ることが考えられるからです。これは地球温暖化よりも深刻な問題で、もし寒冷化が重なると人類史上最悪の悲惨な事態になりかねません。

能天気な鳩ポッポ(鳩山由紀夫)が地球温暖化に気をとられるばかりで石油減耗時代に向けた対策を何もしていないところを見ていると怒りを通り越して呆れます。政治家も国民もそろそろ目を覚まさなければいけません。

地球温暖化はともかくとして睡眠にまつわるくだらないホラ話に踊らされている場合ではないのです。

2010/08/09: 後編の追加に伴い、タイトルを「寝過ぎは早死にの原因となるか 前編」に変更。

2010/04/24: 若干の加筆と最後の1行を追加。

寝過ぎは早死にの原因となるか 後編

(2010/02/23)